2008.07.12 Saturday
ことり 〜トゥルリントゥルランコートゥーリスタール
道の隅に
小さな黒い塊が落ちていた 雨が降りしきる中 人々は傘を深く差し 足早に歩き 車は 水しぶきをあげて 通り過ぎていく 誰も その小さな黒い塊には気づかなかった どんよりと 暗く沈んだ鉛色の空の下 それは とても小さな鳥だった すずめでもない 鳩でもない インコでもない それは一体 何という小鳥なのか? その小鳥に 名前はあったのか? アスファルトの歩道の隅 水溜りの中に 半ば身を浸し 小鳥は 小さな泥の塊のようになって 死んでいた その小鳥は幸せだった 小鳥としての生命を全うして幸せだった 自分の生命を価値づけ 証明するために 何かを残す必要はなかった 小鳥は知っていた 世界のすべてと自分が一つであることを 小鳥としての自分の本分 その可能性を生き 生命を謳歌した 内より溢れる可能性と輝きを 自分が愛した世界のすべてに 大地に 草花に 虫や動物たちに 風や空に 海や川に 太陽と月 天空の星々に そして 人間に すべてなるものに 等しく捧げた 誰かが 気づこうと気づかまいと それでよかった なぜなら 小鳥と世界との間に 隔たりはなかった 小鳥は 世界が自分であること知っていた だから 何かを残さずとも不安も心配もなかった 「特別」なものはいらないかった 気づくものは気づき 気づかないものは気づかない それでよかった ただ ごく自然に そう ごく自然に・・・・ それぞれの生命の内から 湧き上がる希望と喜びによって この星が 満ちていけばいい いつのまにか 水紋が広がるように 山彦が どこまでもこだまするように 自然な 愛の共感と感動によって この星が 輝けばいい 小鳥はそう願った 上を愛するがごとく下も愛し 右を愛するがごとく左も愛し 光を愛するように闇を愛し そうして すべての中心 すべてなるものの源とつながり生きる いと小さきものとして 自己の生命の本分を全うする喜び 自己の存在の中心から とめどなく滾々と溢れるものを 愛する世界と分かち合う幸せ 小鳥はいつでも どこへでも飛んで行った 愛するものの 心の聖域へ そして 枯れかけた泉のほとりに降り立ち 光透波の詩を捧げ 涙を流した 小鳥が捧げた詩としずくは 枯れかけた泉の奥深くへ どこまでも浸透していった すべてなるものの創造の源へと 小鳥は幸せだった 小鳥には見えた 美しい楽園 オアシスが ここに再びよみがえっていくのが ・ ・ ・ そうして ある日 小鳥は 飛ばなくなった 小鳥が愛した青い空 空が愛した小鳥 空からは大粒の雨が降り もはや 動かなくなった小鳥の体を濡らした 子鳥は幸せだった 気づくものは気づき 気づかぬものは気づかない 気づいても 気に留めることなく 通りすぎるもの 気づいて立ち止まるものの 歩き去っていくもの 道を行き交う人々と車 どれくらい経っただろう その小さな黒い塊に気づき 足を止めた者がいた 「見て!・・・・小鳥が死んでいる!」 雨は降り続き 人々と車が往来する中 続く沈黙 「・・・・土にうめてあげたい。」 雨が降り続ける中 小鳥の亡骸は 子どもの手によってひっそりと大地に葬られた ・ ・ ・ そうして 小鳥は地上から姿を消してしまった 本当に? 本当に 小鳥は姿を消してしまったのだろうか? わたしたちは 今も この地上で その小鳥の生き生きとした姿を 鮮明に見 聴き 感じることができる 子どもは 小鳥の絵を描かずににはいられない トゥルリントゥルラン 子どもは 小鳥のように歌わずにはいられない トゥルリントゥルラン 子どもは 小鳥のことを物語らずにはいられない トゥルリントゥルラン 小鳥は今も さえずり 飛ぶ 青々と茂った楽園のオアシスで わたしたちと共に笑い わたしたちと共に涙を流し 共にある トゥルリントゥルランコートゥーリスタール EINHAIEM |




